2013年6月11日

万能べら

「私なんだかこれ気に入っちゃった!」「これ買って帰ろう!」
楽しそうな会話に振り返って見ると、
何だか不思議な形のものを握られて嬉しそうな奥様方。

「これ、何ですか?」
と、お話を伺ったのは八木竹工業三代目・八木秀作さん。
八木竹工業は創業大正14年、にほんいちの竹林面積を誇る鹿児島県で、
竹の素材を生かし、様々な製品を作り続けておられます。

さて、先ほどのこちらは万能べらと言うそうです。

原料には孟宗竹(もうそうちく)を使用。
孟宗竹とは、薩摩の島津家が中国から輸入したものが、
九州に広まったとされている竹の品種です。
世界では主に熱帯地域に生息していることが知られておりますが、
日本では、鹿児島、熊本などに多く生息しています。

孟宗竹は高さ10mほどに成長する大きな竹ですが、
万能ベラに必要な0.5mmの「厚み」のある部分は、一本から7~8本しか採れないそうです。

特徴はなんといってもカーブ!

竹の内側にある渋皮の「カーブ」と「硬さ」を生かすことで、
ヘラが丈夫で長持ちするそうです。変色せず、油が染み込みにくく、
「すくう、混ぜる、炒める」の三役がこれ一本で出来ます!

万能べらの誕生のきっかけは、はっきりとはわかっていないそうですが、
三代目の父親世代の職人さんたちがアイデアを出し合って生まれたのではないかとのこと。
通常のヘラは炒めることには適していますが、混ぜようとするとこぼれてしまったり、
フライパンのカーブにお野菜が張り付いて焦げてしまったり…

お見せしていいのかわかりませんが、我が家の竹べら…

カビて毛羽立っております…

それに比べて八木さんの竹べらはつややかで滑らか。
ずっとふれていたいほどしっとりとしています。

その秘密は素材の下準備にありました。
竹をそのまま使うとはいえ、生の素地を使うとすぐにかびたり、虫がついてしまうそう。
素材の下準備として、まず釜で煮る。
煮るとアクが出てくるので拭き取り、天日で一ヶ月弱干す。
それからさらに高圧釜で圧力をかけます。
高圧釜を使用することによって、長期間囲炉裏で燻された竹と同様、
水分が抜け、固くて丈夫な仕上がりになるそうです。

このような工程を経て、やっと素材として使えるようになるのです。

こちらは八木さんが使用している竹割りの台。
お爺様の代から受け継がれているものだそうです。
年輪に刻まれた刃物の跡から、八木竹工業の歴史や想いを感じました。

今回ご紹介した商品は『日本百貨店オンラインストア』でお求めいただけます。

ごはん道具研究会

日本百貨店 全国から“日本のすぐれもの”を集める百貨店。御徒町・浅草・横浜などに店舗を構え、作り手と使い手の出会いの場としても注目されている。2013年、秋葉原のセレクトショップ「CHABARA」内に、食品専門館の「日本百貨店しょくひんかん」と「日本百貨店しょくどう」をオープン。